電子ボルト [eV] と DNA     




入口紀男



 電子ボルト [eV] は、ボルトといっても電圧の単位でなく、エネルギーの単位です。

   1 電子ボルト [eV] = 1.60 × 10-19 [J] (ジュール)

dna

  DNA の二重らせん



 DNAは二重らせんの構造をもっているとして知られています。
 DNAはたんぱく質でできていて、二重らせんは直径約 0.002ミクロンで長さ約 1メートルです。これが小さな細胞の中のさらに小さな細胞核の中に幾本も入っていて遺伝子情報を担っています。
 DNAは主鎖と塩基(アデニン C5 H5 N5 、グアニン C5 H5 N5 O、チミン C5 H6 N2 O2 、シトシン C4 H5 N3 O など)からできていて、その配列が遺伝子情報です。それらは 1 電子ボルト [eV] 程度の弱い力で結合しています。その結合部分に外部から 1 電子ボルト [eV] の放射線を照射すると結合部分は切断されます。

 ヒトには体重 1キログラムあたり約 1兆個の細胞があります。年 20ミリシーベルトの放射能によって、体重 1キログラムあたり年 125,000,000,000,000,000 電子ボルト [eV] のエネルギーが加えられます。これは、細胞 1個あたり 1日に 340か所を切断する能力をもっています。そのほとんどは細胞を素通りして何も起こりませんが、1キログラムあたり 1兆個もある細胞の中には DNAの主鎖や塩基が切断されるものが一定の確率で発生します。それが放射線障害です。