第6回セミナー (抄録)


熊本大学文書館・<水俣病>研究プロジェクト (HOME)



    モノが、そしてモノをかたちづくる水俣の記憶    

The Dialectical Relationship between Artifacts and Memories of Minamata

【発表者】  下田 健太郎 (K. Shimoda)

【日時】 平成27年3月27日(金)16:30-18:00 【場所】 熊本大学法文棟4F・メディア演習室
  チッソ水俣工場がかつて汚染物質を直接排出した水俣湾は、熊本県の公害防止事業によって1990年にはその一部が埋め立てられた。再生のアピールを主眼に進められた埋立地の整備活用や政治和解を前に、水俣病問題の収束を危惧した被害者たちは、法的・経済的・医療的「救済」では癒えなかった心情を表現するための場として埋立地を捉え直してきた。なかでも被害者有志を中心として1995年に発足した「本願の会」のメンバーは、水俣病の「爆心地」とされる水俣湾埋立地に自らの手で彫った石像を祀り、祈りを捧げてきた。
 本発表では、「本願の会」メンバーによる石像製作と語りの実践を事例に、石像が彼/彼女らの記憶のあり方にどのような影響を及ぼしてきたかについて通時的な視点から考察する。とくに製作者の想起にとってモノが一定の可能性を提供したり、逆に制限するような様相を焦点化しつつ、水俣湾埋立地に立つ石像が彼/彼女らの現実(realities)をどのようにかたちづくってきているかを明らかにしたい。