第7回セミナー要録
熊本大学文書館・<水俣病>研究プロジェクト (HOME)
40年以上にわたって水俣病問題に取り組む富樫貞夫・熊本大名誉教授(81)が「水俣病研究会の活動から見えてきたもの」と題して話した。連続セミナー「今まで語られてこなかった水俣病研究史」全4回シリーズの第1回。熊本大学水俣病学術資料調査研究推進室が企画した。学生や市民ら25人が参加した。
慶田勝彦文学部教授が「水俣病問題は終わっていない。私たちは考え続ける必要がある」とセミナーの狙いを説明。富樫名誉教授が第1次訴訟の経緯を振り返りながら、「チッソの過失責任を認めた第1次訴訟判決が、その後の補償と救済の原点になった」と語った。 第1次訴訟の争点はチッソの過失責任であった。被害発生を事前に予見できなければ責任を問えないという当時の通説を覆すため、富樫名誉教授は「予防原則」の考え方を取り入れた過失責任論を組み立てた。「安全確保の義務に着目した。水俣病発生まで工場排水を分析したことがないチッソはその義務を怠った」と解説した。 また、富樫名誉教授は「現在まで、公害健康被害補償法や救済策で75,000人を超える被害が認められたが、この数字が被害者の全てではない」と述べ、「『水俣病とは何か』という厳密な定義がいまだに確立していないのは大問題だ」と課題を指摘した。 [参照記事] 熊本日日新聞 2015年11月22日 水俣病、市民ら学ぶ 熊本大で連続セミナー開講 読売新聞 2015年11月22日 水俣病セミナー 熊本で始まる 西日本新聞 2015年11月26日 「公害認定が転換点」 富樫熊大名誉教授 水俣病研究会顧みる |