人が自然科学(サイエンス)を最初に知ったのは西欧で 1870年代でした。そのころの日本はすでに明治時代に入っていました。それ以前に西欧にあったのは自然哲学でした。それは、神の摂理が自然界にどのように顕現しているかを研究する学問でした。ニュートンも自然哲学者でした。その主著も『自然哲学の数学的原理』(Philosophiae Naturalis Principia Mathematica)でした。
以下は、哲学史上・科学史上の発見と磁気共鳴イメージング(MRI)の開発の歴史をたどって、主要な人物について簡単にまとめたものです。この中の誰ひとりが欠けても現在の MRIは存在し得ませんでした。
1093年 羅針盤の発明(沈)
しん かつ(沈 括) (1030-1094)
中国では磁鉄鉱が南北を指すことは紀元前(漢の時代)から知られていたが、沈は磁気を帯びた鉄の小片を水盤に浮かべた小舟に載せると、「北極星の北」からわずかにずれた「地磁気の北」を指すことを見出し、羅針盤を発明した。
主著 『夢渓筆談』 1088-1094
1600年 磁気学の創始(ギルバート)
Sir William Gilbert (1544-1603)
イギリスの自然哲学者。エリザベスI世の主治医。「磁気学の祖」と呼ばれる。地球が一大磁石であることを発見した。それまで方位磁針が南北を指すのは北極星に強大な磁気があるからと考えられていた。主著
De Magnete, Magneticisque Corporibus et de Mango Magnete Tellure
Physiologia Nova, 1600
1619年 線形座表系(デカルト)
Rene Descartes(1596-1650)
フランスの哲学者。数直線を負の方向に延長して負の目盛をつけて表わすことができることを発見した。すべてを疑うことから始めて明確な要素を見出し、そこから論証によって一歩ずつ全体の認識に至る方法を提唱した。それまでのスコラ哲学では、真理は信仰によって獲得されていた。主著
Principia Philosophiae, 1644
1665年 スベクトロスコピー・微分積分学の発見・創始(ニュートン)
Sir Isaac Newton (1643-1727)
イギリスの自然哲学者。ケンブリッジ大学在学中にペストの大流行で大学が閉鎖されていた頃、白色光がプリズムによって美しい虹色に分離されることからスペクトロスコピー(分光学)を創始した。そのころ万有引力の法則と微分積分学を発見創始した。光は粒子であると主張したが、一方でニュートンリングを発見し、光の波動性を認めていた。写真はニュートンの分光学の創始を称えてドイツで発行された切手である。主著
Philosophiae Naturalis Principia Mathematica, 1687
1686年 微分記号d/dx、積分記号∫dxの創始、質点のエネルギー(ライプニッツ)
Gottfried W. Leibniz (1646-1716)
ドイツの数学者。哲学者。微分記号 d/dx、積分記号 ∫dxを創始した。質点のエネルギーが「質量×速度の2乗」(mv2)
に比例することを発見した。
1760年 剛体の運動方程式(オイラー)
Leonhard Euler (1707-1783)
スイスの数学者。自然哲学者。剛体の運動方程式を立てた。主著 Institutiones Calculi
Integralis, 1770
1772年 百科全書(ディドロ)
Denis Diderot(1713-1784)
フランスの哲学者、美術批評家。自然哲学の知識もそれ以外の妖術の知識もすべてアルファベット順に並べた。処刑を恐れてヨーロッパ各国を転々とし、20年かけて刊行した。主著 L'Encyclopedie, ou Dictionnaire raisonne des sciences, des arts et des metiers, par une societe de gens de lettres, 1772
1785年 静電気の法則(クーロン)
Charles Augustin de Coulomb (1736-1806)
フランスの自然哲学者。静電気の法則を発見した。
1811年 気体分子数の決定(アボガドロ)
Amedeo Avogadro (1776-1856)
イタリアの自然哲学者。分子の概念を確立した。
1820年 電流がつくる磁界(ビオ)
Jean Baptist Biot (1774-1862)
フランスの自然哲学者。F.
Savartと共にビオ・サバールの法則を実験的に発見した。
1822年 フーリエ変換(フーリエ)
Jean Baptist Joseph, Baron de Fourier (1768-1836)
フランスの数学者。フーリエ級数論を発見創始した。主著 Theorie Analytique de la Chaleur,
1822
1822年 電流磁界の法則(アンペア)
Andre M. Ampere (1775-1836)
フランスの物理学者。電流磁界に関するアンペールの法則を発見した。主著 Recueil d'observations
electrodynamiques, 1822
1831年 電磁誘導の法則(ファラデー)
Michael Faraday (1791-1867)
イギリスの自然哲学者。電磁誘導の法則を発見した。1831年ヘンリーとは独立に電流の自己誘導現象を発見した。1833年電気分解に関するファラデーの法則を発見した。(肖像画出典: 英国立肖像館)主著
Experimental Researches in Electricity, 1855
1832年 電流の自己誘導現象の発見(ヘンリー)
Joseph Henry (1797-1878)
アメリカの自然哲学者。電流の自己誘導現象を発見した。1830年ファラデーとは独立に電磁誘導の法則を発見した。
1834年 電磁誘導の向きに関する法則(レンツ)
Heinrich F. Lenz (1804-1865)
ドイツの自然哲学者。電磁誘導の向きに関する法則を発見した。
1835年 エネルギーの方程式(ハミルトン)
William R. Hamilton (1805-1865)
イギリスの数学者。自然哲学者。古典力学のエネルギーの方程式を確立した。ハミルトニアンとは、古典力学では系のエネルギーを一般化運動量の関数として表したものであり、量子力学では系のエネルギーに対する演算子のことである。
1843年 コンピュータ・プログラム(エイダ)
Augusta Ada, Countess of Lovelace (1815-1862)
イギリスの伯爵夫人。詩人 G. バイロンの娘。数学者 C. バベッジの著作の注釈の中にプログラムを書いた。それは数学者ド・モルガン(1806-1871)によって世界最初のコンピュータ・プログラムであると認められた。
1846年 電磁気量の単位系の確立(ガウス)
Carl F. Gauss (1777-1855)
ドイツの数学者。自然哲学者。1823年に統計学における正規分布の法則を確立した。ウェーバーと共に電磁気量の単位系を確立した。
1846年 電磁気量の単位系の確立(ウェーバー)
Wilhelm E. Weber (1804-1891)
ドイツの物理学者。電磁気量の単位系を確立した。
1847年 熱の仕事当量(ジュール)
James P. Joule (1818-1889)
イギリスの物理学者。羽根車を回して熱の仕事当量(J)の値を測定した。
1866年 自励発電機の発明(ジーメンス)
E. Werner von Siemens (1816-1892)
ドイツの発明家・貴族。シーメンス社を創業した。
1870年 均一磁界の発生(ヘルムホルツ)
Hermann L. Helholtz (1821-1894)
ドイツの生理学者。ドイツ最初の物理学教授。ヘルムホルツコイルを創作した。
1870年 電磁波の存在を予言(マクスウェル)
James C. Maxwell (1831-1879)
イギリスの物理学者。電磁気学を四つの方程式で表して完成した。光が電磁波であることと、あらゆる電磁波は波長こそ異なるが基本的に同じ性質をもつことを発見した。
1872年 気体分子に関する速度分布の法則(ボルツマン)
Ludwig Boltzmann (1844-1906)
オーストリアの理論物理学者。マックスウェル・ボルツマンの気体分子に関する速度分布の法則を発見した。ボルツマン定数 k
は、気体定数をアボガドロ数で除したもの。k = 1.38x10-23 J/Kである。主著 Vorlesungen
ueber Gastheorie, 1898年
1878年 電力の本格的応用(エジソン)
Thomas A. Edison (1847-1931)
アメリカの発明家。1882年ニューヨークにゼネラルエレクトリック社の前身となるエジソン電燈会社を設立した。
1880年 スペクトル曲線(ローレンツ)
Hendrik A. Lorentz (1853-1928)
オランダの理論物理学者。1892年ローレンツ収縮、1903年ローレンツ変換を発見した。電磁波の周波数分布がローレンツ曲線で表わされることを見い出した。主著
The Theory of Electrons, 1909年
1888年 光の電磁波論の検証(ヘルツ)
Heinrich R. Hertz (1857-1894)
マックスウェルの光の電磁波論を実験的に証明した。
1893年 液化ガス用の魔法瓶(デューア)
James Dewar (1842-1923)
イギリスの物理学者。液化ガスの魔法瓶を発明した。
1895年 交流発電の実用化(テスラ)
Nikola Tesla (1857-1943)
アメリカに1884年に移住したクロアチア人技術者。誘導電動機を発明した。交流送電を推進した。ナイアガラの滝で大電力発電に成功した。磁束密度 1テスラ( T) は 1 Wb/m2 である。
1895年 無線通信の成功(マルコー二)
Guglielmo M. Marconi (1874-1937)
イタリアの電気技術者。大西洋を隔てて無線通信に成功した。1909年ノーベル物理学賞を受賞した。 (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)
1897年 歳差運動の方程式(ラーモア)
Sir Joseph Larmor (1857-1942)
イギリスの理論物理学者。クィーンズ大学在職中に、電子が回転しているとき磁場が加えられると歳差運動を行うことを発見した。
1900年 量子論の創始(プランク)
Max Planck (1858-1947)
ベルリン大学在職中に、ある発振子のエネルギーは不連続に飛び飛びの値をとり、特定の値の整数倍となると仮定してその特定の値を量子(quantum)と呼んだ。1918年ノーベル物理学賞を受賞した。プランクの定数
h = 6.63×10-34 Js (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)
1905年 相対性理論(アインシュタイン)
Albert Einstein (1879-1955)
スイスのベルン特許局在職中に1905年特殊相対性理論を発表。1916年ベルリン大学在職中に一般相対性理論を発表した。特殊相対性理論の帰結としてエネルギーが「質量 m×光速 cの2乗」(mc2)であることを見出した。周波数νの光子(フォトン)の運動量が「hν/c」であることを見出した(光量子仮説)。1921年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)
1911年 超伝導現象の発見(オネス)
Kamerlingh Onnes (1853-1926)
オランダの物理学者。1908年ヘリウムの液化に成功した。水銀の超伝導現象を発見した。1913年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)
1924年 スピニングの発見(パウリ)
Wolfgang Pauli (1900-1958)
スイスの理論物理学者。24歳のとき核の旋回(スピニング)の概念に想到した。パウリの原理を発見した。1945年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)主著 Die
Allgemeine Prinzipien der Wallenmechanik, 1926年
1925年 マトリクス力学(ハイゼンベルグ)
Werner K. Heisenberg (1901-1976)
ドイツの理論物理学者。マトリクス力学を創始した。たとえば、スピンのもつ角運動量 L
の時間変化は古典力学では dL/dt =
μ×B
と表されるが、統計的に振舞うスピンの運動もマトリクスを用いて dL/dt = -i(h/2π)[H,L]と表され(H
はハミルトニアン)、古典力学と同型の方程式に従う。同年、不確定性原理を発見した。原子よりも小さな粒子の位置と運動量は同時には一意に定まらない。1923年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)主著
Die physikalischen Prinzipien der Quantentheorie, 1930
1926年 波動カ学(シュレーディンガー)
Erwin Schroedinger (1887-1961)
ドイツの理論物理学者。オーストリアの生まれ。量子力学の一形式である波動力学を創始した。この理論とハイゼンベルクのマトリクスカ学によって量子力学の基礎が確立された。1933年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)主著
Abhandlungen zur Wellenmechanik, 1927
1937年 磁気モーメントの測定(ラビ)
Isidor I. Rabi (1898-1988)
アメリカの物理学者。幼少時にオーストリアより移民。塩化リチウムについてリチウム核( 7Li)の磁気モーメントを測定した。1944年ノーベル物理学賞を受賞した。 (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)
1945年 核磁気共鳴のエネルギー吸収実験(パーセル)
Edward M. Purcell (1912-1997)
アメリカの物理学者。イリノイ州の生まれ。1945年12月半ばにハーバード大学でトリー(H. C. Torrey)、パウンド(R.
Pound)と高周波ブリッジを作成し、近くで購入した 830 ml のパラフィンワックスを試料として、0.7 T の磁場と 29.8 MHzの高周波を用いてエネルギー吸収の形でプロトンの核磁気共鳴の実験に成功した。ブロッホよりも二週間早い実験であった。"We have observed the absorption of radiofrequency energy due to transitions
in a solid material." と述べて同年クリスマス前日に Physical Review誌に投稿した。1 信号の S/N 比は約 20 であった。1952年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)
1945年 核磁気共鳴の電磁誘導実験(ブロッホ)
Felix Bloch (1905-1983)
アメリカの物理学者。ライプチヒ大学でハイゼンベルク研究室の助手を勤めた。スイス国籍を持っていたが、1933年にヒットラーを逃れてドイツよりアメリカヘ移住した。スタンフォード大学で中性子の磁気モーメントを測定した。戦後の研究費として支給された $450のうち $300でオシロスコープを購入した。スクラップで測定装置を作り、1945年12月末にハンセン、大学院生パッカード(M.
E.
Packard)と、ガラス球に入れた 0.1mlの水を磁極の間に置き、7.8MHzでプロトンの核磁気共鳴の実験に成功し、「核の誘導(nuclear
induction)」と呼んで 1946年1月に Physical Review誌に投稿した。2, 3 T1、T2
に関するブロッホの方程式を発表した。4 1952年ノーベル物理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)
1949年 自由誘導減衰(FID)信号の観測とエコー信号の発見(ハーン)
Erwin L. Hahn (1921-2000)
イリノイ大学で核磁気共鳴の研究を始め、1949年6月スピンの傾きに関する研究で学位を取得し、研究助手として残った。同年 8月水とグリセリンの T1を測定していたとき、オシロスコープのスクリーンに自由誘導減衰(free
induction decay,
FID)信号を最初に観測し、それをハーバード大学からイリノイ大学に赴任したスリクター(C. Slichter)が見届けた。これは当時としては困難な技術で、ハーバード大学のトリー(H.
C. Torrey)も "No one has yet observed free precession
signals."と述べていた。また、そのとき二つの 90°パルスによって「小うるさいアーチファクト(annoying
glitch)」が現れることを発見し、スピンエコー(spin echo, SE)と命名した。5 しかし、そもそもいったんバラバラとなったスピン集団が再収束してエコー信号を発生するという考えは、当時熱力学の第二法則に反すると考えられた。翌 1950年にハーバード大学の大学院生カー(Herman
Carr)とパーセルによって 90°と 180°パルスのスピンエコー(SE)信号が観測された。ハーンによる FID 信号の観測とエコー信号の発見は、その後 1960 年代から本格化した NMR の普及発展と、さらに 1970 年代から本格化した MRI の普及発展に照らしても真に意義が大きい。(肖像写真出典: European Magnetic Resonance Meeting)
1950年 化学シフトの理論(ラムゼー)
Norman F. Ramsey (1915-2011)
アメリカの物理学者。化学シフトの理論を確立した。1989年ノーベル物理学賞を受賞した。ハーンの発見したスピン再収束の概念が熱力学の第二法則に反するという疑問を 1956年「負の絶対温度(negative
absolute temperature)」の概念によって解決した。6 (肖像写真出典: Wikipedia)
1956年 フーリエ変換NMRの発明(バリアン)
Russell H. Varian (1898-1959) アメリカの発明家。起業家。1948年カリフォルニア州サンカルロスに資本金 $22,000でバリアンアソシェーツ社を創業した。1948年10月に特許 "Method
and means for correlating nuclear properties of atoms and magnetic
fields" を出願し、その中でハーンよりも早く FID 信号をとらえる手段を記載していた(米国特許第2,561,490号,
1951 年)。1953年 NMR の最初の商用機 HR-30 を開発した。「NMR」という語を最初に用いた。1956年10月に特許出願した "Gyromagnetic resonance
methods and apparatus" には最初のフーリェ変換NMRの概念と手段を記載していた(米国特許第3,287,629号,
1966年)。
1964年 フーリエ変換NMRの実験(エルンスト)
Richard R. Ernst (1933-2021) スイスの物理学者。1962年バリアン・アソシェーツ社に技術者として採用され、1964年にアンダーソン(Weston
Anderson)とフーリェ変換NMRの実験に成功した。7 パンチカード式のコンピューター IBM7090を用いた。1968年スイスに帰国。チューリヒ連邦工科大学で二次元フーリエ変換スペクトロスコピー("Two-dimensional
gyromagnetic resonance spectroscopy" 米国特許第 4,045,723号,
1977年)、フーリエ変換イメージング法("Gyromagnetic resonance Fourier transfom
zeugmatography" 米国特許第 4,070,611号,1978年)、多量子 NMR("Selective detection of
multiple quantum transitions in nuclear magnetic
resonance" 米国特許第 4,134,058号,1979年)を発表した。1991年ノーベル化学賞を受賞した。
1970年 腫瘍組織のT1、T2測定(ダマディアン)
Raymond V. Damadian (1936-2022)
アメリカの医学者。起業家。読み書きを教わった祖母が10歳のとき癌で壮絶死したことにより癌に大きな関心をもつ。バイオリンの才能を顕わしてジュリアード音楽院に進んだが、医学に転向してアルバート・アインシュタイン医科大学を卒業した。ニューヨーク州立大学在職中に腫瘍組織の T1、T2
値が正常組織の値より非常に長いことと、正常組織でも値が組織によって大きく異なることを発見した。8
NMR を臨床診断用の断層撮像装置に応用することを着想し、1972 年に特許出願明細書の中にその概念を最初に記載した。9 1977 年に臨床用装置を試作して撮像に成功した。1980年最初の商用機 QED80を北米放射線学会(RSNA)に展示した。永久磁石方式であった。ダマデイアンの試作1号機はワシントンのスミソニアン国立博物館に永久展示されている。(写真はダマディアンと試作一号機 出典: Smithsonian Magazine)
1971年 生体の局所NMR(阿部)
阿部善右衛門 (1914-1999) 非線形勾配磁場を用いた磁場焦点法を 1971年までに創案した。北海道大学応用電気研究所在職中に大学院生田中邦雄らと磁場焦点法を用いた生体の局所 NMR信号取得法を米国特許出願明細書に記載した。10
1972年 水信号画像(ロウターバー)
Paul C. Lauterbur (1929-2007)
アメリカの化学者。ニューヨーク州立大学在職中に、1972 年 NMR のバックプロジェクション再構成法を独自に着想して、二本の 1 ミリ径の細管中の水のコンピューター画像を取得し、磁気共鳴イメージングを "zeugmatography" と命名して同年10月にイギリスの「Natue誌」に投稿した。11 2003年ノーベル医学生理学賞を受賞した。(肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)
1978年 エコープレイナーイメージング法(マンスフィールド)
Sir Peter Mansfield (1933-2017)
イギリスの物理学者。Pykett I. L. と共に高速イメージング法であるエコープレイナーイメージング(EPI)法を開発した。12 この方法は、1990年代に臨床用に実用化されるに至った。2003年ノーベル医学生理学賞を受賞した。 (肖像写真出典: ノーベル財団電子博物館)
1978年 フィールドエコーイメージング法(ハチソン)
James M. S. Hutchison (1942-2018)
イギリスの物理学者。1978年アバディーン大学でエデルシュタイン(W.
Edelstein)、ジョンソン(G. Johnson)、マラード(J.
Mallard)らと位相エンコード法を用いて「スピンワープイメージング法」を開発した。13, 14
1989年 ファンクショナルMRI(小川)
小川誠二 (1934- ) 血液中のヘモグロビンが酸素との結合によって磁気特性が変化することに着目し、生体の活動領域で血流が増加する際のデオキシヘモグロビンの相対的濃度低下を MRIで描出することができることを示し、BOLD(Blood Oxygenation Level Dependent)効果と呼んだ。15
参照文献
- Purcell, E. M., Torrey, H. C., and Pound, R,V., "Resonance absorption
by nuclear magnetic moments in a solid." Phys. Rev. 69: 37-38, 1946
- Bloch, F., Hansen, W. W., and Packard, M., "Nuclear induction."
Phys. Rev. 69: 127, 1946
- Bloch, F., Hansen, W. W., and Packard, M., "The nuclear induction
experiment." Phys. Rev. 70: 474-485, 1946
- Bloch, F., "Nuclear induction." Phys. Rev. 70: 460-474, 1946
- Hahn, E. L., "Spin echoes." Phys. Rev. 15: 580-594, 1950
- Ramsey, N. F., "Thermodynamics and statistical mechanics at negative
absolute temperature," Phys. Rev. 103: 20, 1956
- Ernst, R. R. and Anderson, W. A., "Application of Fourier transfom
spectroscopy to magnetic resonance." Rev. Sci. Instrum. 37: 93-102, 1966
- Damadian, R., "Tumor detection by nuclear magnetic resonance."
Science 171: 1151-1153, 1971
- Damadian, R., "Apparatus and method for detecting cancer in tissue."
米国特許第3,789,832号, 1974
- Abe, Z., Tanaka, K., Hotta, M. and Imai, M., "Method of obtaining
internal information of measuring target from the out-side by the
application of a nuclear magnetic resonance phenomenon."
米国特許第3,932,805号, 1976
- Lauterbur, P. C., "Image formation by induced local
interactions:examples employing nuclear magnetic resonance." Nature 242:
190-191, 1973
- Mansfield, P and Pykett, I. L., "Biological and medical imaging by NMR." J. Magn. Reson. 29:
355-373, 1978
- Hutchison, J. M. S., Mallard, J. R., Sutherland, R. J., "Method of
deriving image information from objects.''米国特許第4,290,019号, 1981
- Hutchison, J. M, S., Edelstein, W. A. and Johnson, G., "A whole-body
NMR imaging machine." J. Phys. (E)13: 947-955, 1980
- Ogawa, S. Lee, T. M., Kay, A. R., Tank, D. W., "Brain magnetic resonance imaging with contrast dependent on blood oxygenation." Proc. Nat'l Acad. Sci. (USA)87: 9868-9872, 1990